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一昨年、当時慶大4年でドラフト上位候補だった広瀬隆太(現ソフトバンク)に、「大学日本代表合宿で一番すごいと思った選手は?」とたずねたことがある。
「全身がバネのようで身体能力の塊」と、1学年下の彼の名前を挙げていたことを思い出す。
胸囲108センチの筋骨隆々の上半身。打撃練習では、パワー自慢の外国人選手にも劣らない強烈な打球音を響かせる。
西武のドラフト2位新人・渡部聖弥(22)は、貧打に苦しむチームの起爆剤になるかもしれない。
広角に飛距離を出すことができる打撃が持ち味で、将来の目標は「日本の4番」。ただ、力任せにバットを振り回すようなタイプではない。
渡部聖を紹介するうえで、外してはならない「一打」がある。
昨年10月16日、関西六大学野球の秋季リーグの天王山だ。
大商大の4番だった渡部聖は、勝った方がリーグ優勝を決める大経大との3回戦、1点を追う九回無死一、二塁で打席に入った。すると、送りバントで走者を進めた。
大学生活で最後になるかもしれない打席。
監督からのサインは「打て」だった。渡部聖は連盟最多記録タイの通算119安打を積み重ねていて、新記録の達成もかかっていた。
「自分の記録とかは全く頭になくて、目の前の試合だけ。チームを勝たせたい一心でした」
判断は吉と出た。後続がつながり大商大は逆転勝ち。リーグ6連覇を決めた。
ただ、記者はこう思ってしまった。
渡部聖は、チームのみならず大学球界を見渡しても屈指の強打者として評価を受けていた。自分の打撃に自信があれば、打ってつなげても良かったはずだ。
もしや、あの場面で自信がな…