自民党がトリプル補選で全敗した。裏金事件の不信を乗り越えられなかった末の惨敗は次期衆院選への与党内の不安を高め、岸田文雄首相の政権運営の不透明感も増す。一方、野党は依然まとまりを欠き、政治の行方が見えにくいのが現状だ。
次期衆院選の前哨戦と位置づけた立憲民主党は「3勝」に沸く。2021年11月に泉健太代表が就任して以来、公認候補が補選で勝利するのは初めて。裏金批判の「受け皿」としての民意を追い風に、次期衆院選で与党を過半数割れに追い込む戦略を描く。
勝利の報が届いた28日夜、記者団の前に姿をみせた泉氏は「三つの選挙区での勝利となった。全国に意思表示をしたい人がたくさんいる。自民の改革案が進まないなら、信を問わなければならない」と語った。自民党との一騎打ちとなることから「天王山」と位置づけた島根での勝利。次期衆院選に自民を追い込む決意を込めた。
島根では早くから国会議員や秘書が、数千軒の商店や事業所を訪ね歩くローラー作戦を展開。「自民に対する怒りや不満を抱く人たちが、こっちの話を聞いてくれた」と陣営関係者はかつてない手応えを感じた。与野党一騎打ちの対決で自民批判票を受け止めるという、立憲にとっての理想的な構図となった。
泉氏は記者団の取材に、1989年参院選でリクルート事件批判などで自民を過半数割れに追い込んだ土井たか子・社会党委員長の名言を引き、「山が動き始めている」と語った。
今後は岸田文雄首相に対し、裏金事件の実態解明と抜本的な政治改革を強く迫る構えだ。泉氏は「(今国会で)政治改革に答えが出なければ、すべて自民の責任だ。不信任に値する」として、会期末での内閣不信任案の提出をちらつかせる。
ただ、立憲の足元も盤石とは…