共同で日本酒を醸した奥能登の酒蔵と石川県内外の酒蔵の担当者=2024年6月7日午後4時16分、金沢市広坂1丁目、安田琢典撮影
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 能登半島地震で被災し、日本酒を醸せなくなった奥能登の酒蔵を救おうと、石川県内外の酒蔵が一肌脱いだ。奥能登のレシピを持ち出して忠実に再現するとともに、連携して醸した新しい酒もできあがった。

 7日、金沢市の金沢21世紀美術館に、奥能登の五つの酒蔵と、協力する県内外の九つの酒蔵の担当者が集まった。

 九つの酒蔵のうち、五つの酒蔵では被災した酒蔵の酒を再現し、新しい酒を醸造。残り四つの酒蔵は、9月の販売をめざし新しい酒を醸す。

 「能登の酒を止めるな!」と銘打って進められたプロジェクトは、石川県白山市の吉田酒造店が音頭を取って始まった。吉田泰之社長は「被災した酒蔵は向こう数年、酒造りができないと聞いた。優しい味が特徴の奥能登の酒を守ることはもちろん、流通も止めてはいけないと思った」と話す。

 同県能登町の松波酒造では、多くの蔵人たちが避難所暮らしを余儀なくされた。酒蔵からやっとの思いで運び出した酒米は3トン。一部を生酛(きもと)造りを得意とする群馬県川場村の土田酒造に持ち出し、一緒に醸した。松波酒造の金七聖子若女将は「普段やらない造り方で生まれた酒。本当に感謝している」と話す。

 福井県永平寺町の吉田酒造は、石川県輪島市の白藤酒造店と組んで酒を仕込んだ。杜氏(とうじ)も社長も女性という吉田酒造は昨年11月から新しい酒蔵で仕込みを行っている。吉田祥子営業部長は「奥能登の酒は残さないといけない。新しい蔵で一緒に醸した酒は明るく爽快で、希望が持てる味わいになった」と振り返った。

 能登町の鶴野酒造店は長崎県平戸市の福田酒造とタッグを組み、能登町の数馬酒造には吉田酒造店が協力。輪島市の日吉酒造店は広島県竹原市の藤井酒造と手を取り合った。

 藤井酒造は2018年の西日本豪雨で酒蔵が浸水する被害に遭っており、藤井義大社長は「能登半島地震はひとごとに思えなかった。輪島の食文化に合った食中酒を醸すことができた」と話した。

 連携して醸した酒は、奥能登のレシピを再現した酒とセットで10日から全国で販売されている。ともに720ミリリットル入り、税込み4400円。問い合わせはプロジェクトのホームページ(https://www.makuake.com/project/noto_sake2別ウインドウで開きます)からメールで。

 プロジェクトは8月7日まで、クラウドファンディングで活動資金を集めている。9月の販売に向けて連携する石川県外の酒蔵は、森酒造場(長崎県平戸市)、油長酒造(奈良県御所市)、上川大雪酒造(北海道帯広市)、伊東(愛知県半田市)の4酒蔵。吉田酒造店も協力する。(安田琢典)

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