
7月4日に行われる英国の総選挙で、14年ぶりの政権交代が濃厚な情勢になっています。スナク首相率いる保守党が、世論調査で最大野党・労働党に大差をつけられています。なぜか。東京大大学院の遠藤乾教授に背景を聞きました。
――現在の英国政治をどう見ていますか。
一言でいえば「ブロークン」(壊れている)でしょうか。
いまの保守党政権が誕生した2010年、党首だったキャメロン氏(現外相)は43歳と若く、13年間政権の座にあった労働党が取り込めなかった穏健な中道保守層を押さえました。過半数が取れなかったために進歩的な自由民主党と組んだこともあり、環境への取り組みも含め、フレッシュさが前面に出ていました。
ただ、保守党は1990年代から欧州との関係性をめぐって党内不和がくすぶっていました。キャメロン政権はこれを鎮めようと、15年の総選挙の公約に、ブレグジット(英国の欧州連合離脱)について是非を問うと盛り込みました。
――それが16年の国民投票につながります。
党内の紛争を国民に外部化して委ねる行為です。ブレグジットは英国にとって明らかな「国損」。保守党が長らく抱えてきた内紛が国をのっとり、国を壊してしまった。
英国にとって、1973年に当時の欧州共同体(EC)に加盟して以来、EC、EU(欧州連合)というのは体の一部になっていて、それを失ったわけです。当然、その後遺症に苦しむことになります。
――ブレグジット後の英国は…