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炭の生産量日本一を誇る岩手県で、若手の炭焼き職人がSNSを活用し、消費者のニーズに合った新商品を開発した。小さな炭は火付きがよく、はじけることが少ない。子どもでも安全に使える。里山の自然保護に配慮して材料を選んでおり、キャンプ愛好家の評判も上々だ。
県北部の軽米町の山あいに、五つの大きな炭小屋が並んでいた。辺りは雪が積もっている。手元のスマホは圏外。近くでまき割り機がエンジン音を響かせている。
広大な森林が広がる岩手県では、約900年前から木炭を生産していたという。生産者は減ったが、林野庁によると、2023年の生産量は1535トンで、大正時代から続く「日本一」を維持し続ける。
炭作り100年以上という同町の「於本(おもと)薪炭」。5代目、於本宗也さん(34)は介護福祉士として約5年間働いた後、25歳で家業の炭焼きの道を歩み始めた。
歴史と実績がある岩手県の木炭。品質の良さはお墨付きだが、消費者にとっては必ずしも使いやすいものばかりではなかった。伝統的な製造方法はそのままで、新たに開発した商品は、自然環境に優しく、ソロキャンパーも家族連れも満足するものになった。
炭作りは手が掛かる。原料は…