花火の礎を築いた男がいた。夢は、日本の「HANABI」を海外に広めること。この夏、遺志を継いだ花火師たちが世界最高峰のカナダ・モントリオール国際花火競技大会に初出場する。
その男は、武藤輝彦(てるひと)さん(1921~2002年)という。姉は、日本初の女性弁護士・裁判官の三淵嘉子さん(旧姓・武藤)で、NHKで放送中の連続テレビ小説「虎に翼」の主人公・寅子(ともこ)のモデルだ。
親交が深かった日本煙火協会の河野晴行専務理事(74)によると、武藤さんの父は台湾銀行を経て、川崎市の登戸地区で火工品会社「昭和火工」の経営に携わる。照明弾や発煙筒をつくっていたという。
視覚的な花火を文字に
武藤さんは東京大学文学部を卒業し、陸軍に従軍。敗戦後、新聞記者などを経て、茨城県に火工品会社をつくり、1976年には北海道で花火会社「海洋化研」を立ち上げた。河野さんは「父の会社に出入りする花火師に魅了され、花火の世界に飛び込んだのではないか」と推測する。
戦後まもなく、各地で花火大…