東洋のベネチア――。SNSなどでこう呼ばれる地区が京都府舞鶴市にある。江戸時代の城下町にあった漁師町をルーツに持つ吉原(よしはら)地区だ。水路沿いに並ぶ舟屋などの伝統的景観を守ろうと、市が調査報告書をまとめ、観光マップも作った。重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)をめざす。
幅約10メートル、全長約550メートルの水路が舞鶴湾西港に注ぐ。「吉原入江」と呼ばれ、その両岸に細長く広がる町並みが吉原地区だ。
水路にかかる水無月(みなつき)橋から望む風景は撮影スポットとして人気を集めている。間口の狭い家屋のそばに漁船がとまり、SNS上には「東洋のベネチア」の文字が躍る。
明治初期の町の構造 150年後も維持
この吉原地区は江戸時代、現在の市西地区で栄えた田辺城の城下町にあった。1727(享保12)年の大火で、城下町から離れた現在地に移転したとされる。
市は2020年、京都女子大学の協力を得て調査を始めた。歴史的景観の保存に向けた対策を検討するためだ。今年3月に調査報告書をまとめた。田辺藩の史料や明治時代の地籍図などと、現地調査の結果を照らし合わせ、現在までの地区の変遷を説明している。
報告書によると、明治初期の町の構造が150年後の現在まで、ほぼ維持されていることが確認された。短冊状の敷地に軒を連ねる約500軒の町屋、入江に延びる小道、舟屋を行き来する路地。江戸時代後期の民家もあるという。
■舟屋の敷地 480隻以上収…