市街地を走る自動運転バス=2024年12月12日午後1時2分、鳥取市、富田祥広撮影

 車が行き交う市街地の交差点。信号が青に変わると、バスはスムーズに走り出した。運転手はハンドルを握っていない。「いつでも操作できる体勢をとっています。安心してご乗車ください」。運転手は笑顔を見せた。

 車体に取りつけたカメラやセンサーの情報をもとに自動運転で走るバスだ。鳥取市が12月12~24日に市内で実証運行を実施。約4.8キロの周回ルートを、時速35キロ以下で1日に何度もぐるぐる回った。

 市民向けの無料の試乗体験会には、10日間(計70便)で500人以上が参加。市内の女性(68)は「結構スムーズで、危険は感じなかった」。一方、隣の席に座った長女(38)は「グンと加速するのが少し怖く、ガッコンとブレーキがかかるのも気になった」と話した。

 運転手の高齢化やなり手不足により、全国的にバス路線の維持が大きな課題となっている。解決策の一つとして、自治体などが導入をめざすのが自動運転バスだ。政府は2025年度までに全国50カ所程度でバスなどを自動運転化する目標を掲げており、全国各地で実証実験が行われている。

 鳥取市も22年から実証実験に乗り出し、市街地で実際にバスを走らせるのは2回目だ。アクセルやハンドルの操作はシステムが担い、走行車線にはみ出した路上駐車をよけたり、交通量の多い交差点で右折したりする操作は「セーフティードライバー」と呼ばれる運転手が手動で担当。自動運転の「レベル2」と呼ばれる段階だ。

 2月に市街地で行った1回目の実証実験では、総走行距離に対する自動運転の割合(自動運転率)は80.2%だった。車載カメラが信号の色を認識できなかったり、路肩の看板を検知して急ブレーキがかかったり。計約700人の試乗参加者のうちアンケートに回答した人の3割が、乗車中に危険を「感じた」と答えた。

 市は今回の実証実験で「自動運転率90%以上」を目標に掲げた。ルート上の9カ所の信号機を車両側のシステムと連携させ、信号の色を正確に認識してスムーズな減速や発進ができるかを確認。また、ルート途中に降車できる停留所を設定し、乗客が安全に降車できるかを検証した。今回の自動運転率や課題は年度内にまとめる予定だ。

 市は、一定の条件下ですべての運転操作を自動化する「レベル4」での正式導入をめざす。深沢義彦・鳥取市長は「安全運行面の課題や経費の問題などクリアすべきハードルがたくさんある。いつから導入するかを具体的に申し上げるのは、まだ少し難しい」と話している。

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