パネル検査で見つかった薬による治療で、病状が回復した太田凡さん=2024年9月27日、京都市、辻外記子撮影

 胃のあたりが時折、きゅっと痛む。

 違和感が1カ月ほど続いていたため、太田凡(ぼん)さんは2024年1月4日、大津市民病院で検査を受けた。

 「CTなんですが」。消化器内科の城正泰医師(47)の言葉に「何かあるな」。画像を見てすぐ、太田さんにはわかった。

 「膵臓(すいぞう)にがん。転移もある。厳しいな」

 診断は、肝臓に多数の転移があるステージ4の膵がん。

 看護師である妻(57)が、太田さんのいないところで城さんに余命を聞くと、「半年ほど」と伝えられた。

 太田さんは当時61歳の医師で、京都府立医科大救急医療学教室の教授だ。非常勤をしてきた大津市民病院で治療を受けることにした。

 入院して遺伝性の遺伝子変異があるかを調べる検査をした。

 がんの原因となる遺伝子(ゲノム)の異常な変化が見つかれば、効果が見込める薬を使える。この時は変異は見つからず、標準治療とされる抗がん剤の点滴を1月下旬に始めた。

 副作用で発熱し、手にしびれが出た。食欲は落ち、1カ月で体重は10キロ以上減った。

膵がんがわかり、抗がん剤治療をしていた頃の太田凡さん=2024年4月22日、大阪市北区、辻外記子撮影

 春先までは順調な経過だったが、4月に首に血栓ができ、6月には腫瘍(しゅよう)マーカーが上がり始め、脳梗塞(こうそく)にもなった。

 治療法がとぼしかった、ステージ4や完治が難しい難治がん。近年は医療の進化によって回復したり長期間生存ができるようになったりしています。患者自身や医師らが驚くほどの変化や、限界もある現在地を伝えます。

「パネル検査、受けられるなら」

 6月下旬。同級生の消化器外…

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