横浜国立大准教授の安野舞子さん=2024年3月、東京都中央区
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 家族同然の愛犬や愛猫と暮らす高齢者たち。高齢の飼い主が医療・介護の福祉サービスを必要としたとき、ペットへの対応が大きな課題として浮上します。この問題をどう考えればいいのか。「人と動物の関係学」を研究する横浜国立大の安野舞子准教授に聞きました。

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 ――「高齢者の福祉」と「ペットの福祉」はどのように結びついているのでしょうか。

 超高齢社会において、犬や猫が数少ない心のよりどころという独居の高齢者が増えています。入院または介護施設へ入所しなければいけない状況になったとき、「ペットがいるから」と拒否する事例が相次いでいます。心身の衰えや認知症の進行で適切な飼育ができなくなり、虐待に近い飼い方になってしまう場合もあります。放置すれば、高齢者とペット、双方の生活状況は悪化するばかりです。

 動物愛護管理法には、ペットの「終生飼養」という理念が掲げられています。ペットをきちんと飼い続けるには、高齢者への福祉支援が必要です。また、ペットの福祉が保障されなければ、高齢者は適切な福祉のサポートにつながることができません。

 ――どのような対応が求められていますか。

 環境省は2021年に多頭飼育対策のガイドラインを公表しました。環境省による調査の結果、多頭飼育者にはやはり高齢者が多いことが明確になりました。このガイドラインでは、社会福祉行政と動物愛護管理行政など幅広いセクターが連携して取り組む必要性を強調しています。多頭飼育の要因や課題の分析調査をふまえたもので、この方向性は高く評価できます。

 「多頭飼育崩壊」は、ペットが増えすぎて飼育不能になり、飼い主の生活がはたんし、周辺の環境にも悪影響をもたらす問題です。ペット問題ととらえられがちですが、動物愛護管理部局だけで解決することはできません。背景には、飼い主の心身の問題や経済的困窮、孤立があります。社会福祉部局のサポートが求められます。また専門知識を持ったマンパワーも不足しており、動物愛護ボランティアの協力も欠かせません。

 ただ、ガイドラインは動物愛護管理行政の担当者にはある程度広まっていますが、社会福祉関係者には十分に周知されていないと感じています。

 ――自治体の対応は。

 私は2022年、高齢者のペ…

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