2008年3月4日、スイスのジュネーブで報道陣に話すタタ・グループのラタン・タタ氏=ロイター

 インド大手財閥タタ・グループの持ち株会社「タタ・サンズ」のラタン・タタ名誉会長(86)が9日、西部ムンバイの病院で死去した。1990年代から始まったインドの経済自由化に合わせ、欧州の大手企業を買収するなど、強力な指導力を発揮。世界的な企業に発展させた。

 タタ氏は37年、インドで少数派のゾロアスター教徒の創業家に生まれた。62年にグループに入社。91年から約20年にわたってタタ・サンズ会長を務め、英高級車ブランドのジャガーやランドローバー、欧州鉄鋼大手コーラスなどを買収し、売り上げを伸ばした。「世界最安車」と言われたナノの発売も主導したと言われる。

 日本企業との業務提携も進め、日印の経済関係の拡大に貢献したなどとして、2012年に旭日大綬章を授与された。

 インド経済が専門の神戸大学の佐藤隆広教授は取材に対し、「民間企業のトップとしてインドの経済改革を牽引(けんいん)し、一つの時代を築いた偉大な人物。教育分野などの慈善活動にも力を入れ、真面目にビジネスをしていくという模範を示してきた」と指摘した。

 タタ・グループは現在、ITサービスや鉄鋼、自動車、ホテル、飲料事業など約30社を傘下に収め、世界100カ国以上で事業を展開する。モディ首相は訃報(ふほう)を受けて、「先見の明のあるビジネスリーダーだった」とSNSへの投稿で哀悼の意を表明した。(ニューデリー=石原孝)

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