水俣病被害者の会の中山裕二事務局長=2024年5月28日、熊本県水俣市、岡田玄撮影
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 水俣病の被害を訴えていると、時間を過ぎたとしてマイクを切られる。こんなことが、患者らの団体と伊藤信太郎環境相との5月の懇談会で起きた。団体側は抗議し、伊藤環境相が謝罪した。その後、SNSでは「時間を守れ」といった団体側を非難するような投稿もあった。被害を訴える人たちはいまも厳しい立場に置かれている。長年患者らの支援活動に取り組んできた「水俣病被害者の会」の中山裕二事務局長(70)に聞いた。

 ――環境相との懇談の場で発言時間が3分に制限され、マイクが切られました。中山さんはその場にいて抗議しました。

 「大臣との面会や懇談の場での発言時間の申し合わせは、これまでもありました。大臣にも日程があるので、いわば紳士協定です。こうした申し合わせがあることは理解できます。『3分で』と言われれば、間に合うように努力してきました。もちろん、患者側は話に慣れている人ばかりではなく、思いがあふれて時間内に収まらないこともあります」

 「問題はマイクの音声を切ったことです。実は、あの場で最初は事態がのみ込めませんでした。音が聞こえなくなった時、発言者が手持ちのワイヤレスマイクのスイッチを間違えて切ってしまったのだと思いました。だから、後ろから発言者に『スイッチ、スイッチ』とささやいたんですよ」

 「2人目の時は『時間です』と職員に言われ、やはりマイクの音が落ちました。またスイッチを間違えちゃったかと思った。けれども、2人目の発言者は地声が大きいんですよ。だから、マイクなしで話し続けました」

 「そして3人目。3分を過ぎたところでやはり音が切れて、職員がマイクを取り上げたんです。そこで、これはおかしいと気づきました。大臣との懇談は30年くらいは続けていますが、こんなことは前代未聞です」

形骸化するヒアリング

 ――被害者の会の事務局長として環境省とは長く交渉してきました。

 「かれこれ40年以上、環境省とつきあってきました。それなりの関係を築いてきたと、ぼく自身は思っています。水俣病だけでなく全国公害被害者総行動なども含め、これまで環境省が関係者との話し合いの場を閉じたことはありませんでした。そもそも、相手に対して信頼関係がないと話し合いはできません」

 「ただ、この10年ぐらいで…

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