防衛省が米政府から防衛装備品を購入する「有償軍事援助」(FMS)で、2023年度の支払いが円安の影響を受け、当初の想定より1239億円増えていたことが会計検査院の調べでわかった。FMSの契約は為替の影響を考慮した内容ではなく、多額の為替差損が生じていた。

 防衛省は為替の影響を調べていないが、会計検査院が初めて調べた。

 防衛省は米国政府を窓口として、米国製の武器や訓練などの役務を有償で買っている。艦船や装備品は高額で発注から納品まで数年かかり、後年度負担が生じている。

 検査院は、23年度に支払い対象となった計約57億ドル(7928億円)の契約について調べた。個別に契約当時に財務省が決めたレートを元に試算したところ、もともとの契約額は6688億円で、為替により1239億円の追加支出が生じていた。

 19~22年度は1ドル=108~110円で、当初契約と支払額で大きな変動はなかったが、23年度は同137円と円安になり、支払額が大幅に増えた。

 具体例では、防衛装備庁は19年に誘導弾の整備機材を28億円で買う契約を締結。最初の2年は円高傾向で約2千万円支払いが減ったが、3年目以降は急激な円安で支払いが約3億4千万円増えていた。

防衛省の契約、為替の影響考慮せず

 検査院によると、民間企業では為替を固定した契約を結ぶことがあるが、防衛省の契約は為替の影響を考慮していないという。

 政府は中国や北朝鮮への対応から、防衛予算を増やしている。23年度から5年間は前計画の1.6倍の43兆円だ。後年度負担も増える見通しで、22年度は為替の影響を受ける契約対象額は5523億円だったが、23年度は2兆1267億円に拡大している。

 検査院は「今後、防衛予算が大幅に増えていることを考えると、後年度負担で生じる為替の影響については適切な情報開示が必要だ」とする。

 防衛省は取材に、「総額が決まっており、後年度負担が際限なく増えることはない。為替の影響で予算が圧迫され、必要な整備ができないことがないよう、事業の効率化を進め、より適切な予算管理を進めたい。また、事業の透明性を高め、国民への説明責任を果たしていく」としている。

高額になりやすい「FMS」、問題視も

 元参院予算委員会調査室長の…

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