【神奈川】新型コロナウイルスのワクチンを開発した米バイオ企業モデルナは17日、日本初となるワクチン製造拠点を藤沢市の「湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)」内に設けると発表した。遺伝情報の一部をコピーした「m(メッセンジャー)RNA」を使う技術をベースにしたワクチンや治療薬の製造を見据え、2027年の稼働をめざす。コロナ禍を機に国産ワクチン開発・生産体制の強化を決めた政府方針に基づき、経済産業省の補助金も受けるという。
同パークは、もともと武田薬品が自社施設を外部に開放して誕生した研究開発拠点で、現在は独立し、製薬や次世代医療、AIなど幅広い業種や規模の企業、団体など約190社が入居。米・ボストンなどのように、スタートアップや大学、大手製薬などが集積し、行政も後押しして技術やアイデアを製品に育てていく「エコシステム(生態系)」の形成をめざしている。
パーク内で会見したモデルナのステファン・バンセルCEOは「我々には科学をちゃんとみて製造につなげ、国の承認も得ていくチームが必要。湘南(アイパーク)の環境にひきつけられた」と語った。
モデルナはコロナ禍の日本政府へのワクチン供給を機に21年に日本法人を設立。東大や国内製薬大手などと連携して研究や協業を進め、23年には立教大発のベンチャーを買収。現在、呼吸器系ウイルスや希少疾患などのワクチンや治療薬六つの治験が進行中で、国内に約80人の社員がいるという。新工場で扱う製品の種類や量などは今後の需要により未定だが、コロナとインフルエンザの混合ワクチンについて数年中の供給をめざしたいという。
黒岩祐治知事は「今度パンデミックがやってきたら、このエリアでワクチンがすぐ作られる。どれだけ心強いか。我々もコミュニティーの一員としてしっかり支えていきたい」と話した。(足立朋子)