写真・図版
「白鳥の森」代表理事の野口登志子さん=山口凜撮影

 一般社団法人「白鳥の森」は、男性のDV被害者支援に取り組む数少ない支援団体だ。徳島市内の事務所には、妻からのさまざまな暴力に悩んでいる男性たちが、全国からやってくる。

 代表理事を務める野口登志子さん(64)はかつて、鳴門市役所で他自治体のモデルになるDV支援を展開し、内閣府のアドバイザーも務めた「スーパー公務員」だった。だが「女のくせに」というやっかみをかい、市と裁判で争ったことをきっかけに退職。元同僚らと共に団体を立ち上げた経歴の持ち主だ。さまざまなジェンダーバイアスと闘ってきた野口さんに、話を聞いた。

 ――DV支援にかかわったのは、偶然だったそうですね。

 2007年に担当部署に異動しましたが、当時はDVのことは何も知りませんでした。部屋の一角で「私でよければ」と話を聞いたのが始まりですが、先駆的な自治体の人にアドバイスを受け、手探りで勉強を重ねました。

 そうこうするうちに、次から次へと相談者が来るようになり、とても1人では抱えきれなくなりました。それで10年に四国の市町村では初めて、全国でも14番目となる配偶者暴力相談支援センターを開設することになりました。

 ――センターの取り組みは「鳴門モデル」と呼ばれ、他自治体のお手本になったそうですね。

 とにかく「相談者を1人にさせない」を合言葉に、5、6人いた相談員と手分けして、病院や警察、裁判所にも必ず相談者と一緒に出向きました。

 自立のゴールも、生活保護の受給ではなく就労を目指しました。一緒にハローワークに足を運び履歴書の内容を考えたり、面接用の服を貸したり。県外からも相談者が訪れるようになり、市役所周辺にアパートを借りて住む人も多かったです。男性被害者の相談にも、このころから対応していました。

 13年には内閣府のアドバイザーに任命され、全国各地で講演したり、新聞やテレビに採り上げられたりもしました。

 ――大活躍ですね。

 意図せず私ばかりが目立ってしまったので、男性幹部には面白くなかったようです。被害者への対応をめぐり、他部署の担当者とぶつかることもよくありました。

 決定的だったのが、16年にあった出来事です。

突然の懲戒処分、相談員の雇い止め

 ――何が起きたのでしょう。

 役所内で情報漏洩(ろうえい…

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