• 【連載】去りゆく人びと 消えゆく希望 ウクライナ侵攻3年⑥

 1月31日、金曜、午後7時、キーウ。雑居ビル地下2階のショーパブで、19歳の女性が笑っていた。

 アナスタシア・ネステロワさん。コメディーショーを見て、甘めの赤ワインを飲んで。戦争のさなかでも、少なくとも週に1回、こうして外に出かける。

 「くよくよしても、仕方がないから」

 そんな思いが、強くなっている。

写真・図版
東部ドネツク州アウジーイウカから首都キーウに避難してきたアナスタシア・ネステロワさん=2025年2月3日午後、キーウ、藤原伸雄撮影

 東部ドネツク州アウジーイウカ出身。ロシアによる全面侵攻が始まって約3週間後の2022年3月13日、家族で避難した。親ロシア派の武装勢力が同州などで紛争を起こした14年以来、2度目の避難だった。

記事後半には、長編動画「ウクライナ侵攻3年 苦悩と平和への思い」があります。

 「すぐに戻れるだろう」。そう信じた。自宅から持ってきたのは、最低限の衣類だけ。でも、戦闘は激しくなる一方だった。数カ月間、キーウのアパートに引きこもった。友だちや親戚に会いたくて、恋しくて、しばらく泣いた。

 時間が経つにつれ、こう思い…

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