【連載】「インソウル」の呪縛 超一極集中の韓国 第5回

生まれ育った韓国南部の河東郡で起業した李康熙さん。ソウルでゲーム開発者として経験を積んだ後にふるさとに戻った=2025年1月13日、稲田清英撮影

【連載】「インソウル」の呪縛 超一極集中の韓国

 韓国では、人口(約5170万人)の半分が首都圏に暮らしています。多くの若者がめざすソウルの大学を指す「インソウル(In Seoul)」という言葉が象徴するように、ソウルにいてこそ成功への道も開けるという「呪縛」が社会を覆っています。「超一極集中」の韓国のリアルを追いました。

 「超一極集中」の磁力は韓国社会を広く覆う。急速に進む少子高齢化や格差といった韓国の社会課題、人々が感じる「生きづらさ」とも結びつくものだ。

 そうした「構造」にあらがうことは容易ではない。私も2度のソウル特派員時代を含めた取材のなかで、「自分だけ背を向けるのは難しい」といった声を何度も聞いた。

 とはいえ、「ソウルだけが人生じゃない」とばかりに、新たな生き方を模索する若い世代も出てきている。

 ソウルで7年ほどゲーム開発者として会社員生活を送ったあと、故郷に戻って地元農産品のブランド化などを支援する会社を起業した李康熙(イガンヒ)さん(28)もその一人だ。

李康熙さんがソウルを去ると告げた時、周囲の反応は「おかしくなったのか」でした。故郷に戻った李さんはいま、どんな思いで過ごしているのか。記事後半でその胸の内に迫ります。

 1月半ばの早朝、ソウル南部…

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