連載「在来作物はいま」第2部(4)
羽黒山山頂の出羽三山神社(山形県鶴岡市)へと続く2446段の石段をのぼると、山頂近くの左手に重厚な造りの建物が見えてくる。江戸時代までは華蔵院という寺で、現在は参拝者らに宿泊や食事を提供する羽黒山参籠(さんろう)所「斎館」だ。
出羽三山への参拝者は山に入る前、斎館や宿坊に泊まり、精進潔斎(けっさい)して身を清める。その際などに供されるのが、肉や魚を使わない精進料理だ。
斎館では、出羽三山で修行した山伏たちの生活に根ざした精進料理を出している。一般の観光客も宿泊でき、食事のみの利用も可能だ。
地域で受け継がれてきた在来作物や伝統野菜は、収量が少なく手間もかかるといった難しさから、継承が危ういものも少なくありません。在来作物をめぐる連載の第2部(全6回)では、在来作物を食の現場から支える人たちを描きます。今回はその4回目。
移り変わる精進料理 数年前から在来作物も
昼食(予約制)で提供する精進料理は、7品と10品の2コースが用意されている。10品コース(税込み3850円)は、お膳の上に月山筍(だけ)の煮物、ごま豆腐のあんかけといった定番料理に加え、周辺の山々で採れた山菜やキノコなど地元の食材をふんだんに使った料理が並ぶ。料理に山伏の隠語の別名があるのも特徴で、月山筍の煮物は食材を出羽三山や山小屋に見立て、「月山の掛小屋」と呼ばれる。
「精進料理には、山伏が生きるために山菜を食べ、保存してきた知恵が反映されている」
ここで30年ほど料理の腕をふるってきた料理長の伊藤新吉さん(55)はこう語る。
例えば、山菜をおいしく食べ…