コロナ禍の収束やウクライナ戦争をきっかけに、物価高が世界で進む。その波が日本にも及び、円安が拍車をかけ、「アベノミクス」がめざしたデフレ脱却がようやく実現しつつある。それなのに、多くの中小企業や働き手が豊かさを実感できないままだ。一時しのぎではなく、日本経済の地力を育てて、暮らしを底上げする政策が求められている。
ものづくり大国ニッポン。それを象徴する街のひとつが、大阪府東大阪市だ。5千余の中小零細町工場が集まる。
ある町工場の社長が、「気がめいっています」と言う。なぜですか?
「ことしの春闘の賃上げぶりが、えげつないからです」
経団連が発表した大手企業の賃上げ率は、平均5.58%。これは33年ぶりの高さだ。
「この春のうちのアップ率は2%にもいきません。社員たちは口にしませんが、『どうせ自分たちは蚊帳の外』と思っているはずです」
損益ギリギリの中でも賃上げをした。それは、社員が他社に移ってしまうのではないかという恐怖があるから。そして、物価高騰で生活がたいへんな社員たちのために、という責任感から。
物価高、価格転嫁すれば「失注の恐怖」
政権や経団連のエラい人たち…