高齢者の暮らしも課題が山積している。その一つが低年金の問題だ。高齢者の割合が増え、若い世代が減るという人口構造が変わらないなか、医療や介護を含めた社会保障をめぐる負担の議論は避けられない。

女性が保管していた年金手帳と年金振込通知書=2024年10月9日、埼玉県春日部市(画像の一部を加工しています)

ひと月の受給額、9万3千円

 「値下げ品が多い。お肉なんかは冷凍しておけばもつの」

 10月上旬、埼玉県春日部市に住む女性(85)は、自宅の冷凍庫から豚肉を取り出した。2カ月ほど前に買った200グラム入りのパックには、割引シールが付いていた。

 収入は年金のみ。基礎年金(国民年金)と厚生年金をあわせて、ひと月の受給額は9万3千円ほどだ。

 18歳で高校を卒業した後、水道関係の会社に就職した。2年で辞めて飲食店で働き、29歳で結婚。専業主婦となった。

 夫と離婚し、再び働き出したのは40代後半。「ちゃんと厚生年金に入って働いたのは十数年の間」と女性は言う。

 住んでいる団地の家賃は4万5千円。残りの約4万8千円から光熱費や食費などを捻出している。

 介護サービスの費用も月6千円ほど払う。7年前に転倒して手足を骨折し、出歩く時には歩行器や杖が欠かせない。それでも女性は、「歩けるようになれば、何とかなると思うの」と笑みを浮かべる。

 週に1回ほど、リハビリを兼ねて1時間弱歩き、食料品店に向かう。形のそろわない野菜など、大手スーパーの価格の3分の2程度で買える。

 ただ、「本当にギリギリ。長い間、お洋服も買っていないし、髪も自分で切って結んでいる」とも漏らす。

 長男から同居を提案されたが、「息子には家のローンもあるし、子どももいる」と、迷惑をかけたくなくて断った。

 「元気でいることが、心配す…

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