写真・図版
あまのさくやさん=岩手県紫波町

 外資系企業でバリバリの営業職として働いていた父・満也さんに、異変を感じるようになったのは2009年。あまのさくやさん(39)が20代の時だった。

 一緒に旅行に訪れたアメリカで、父は「行きたい場所がある」と1人で出かけては目的地にたどりつけなかったり、滞在先のホテル名が思い出せなかったりした。

 当時、父は57歳。あんなに英語が堪能なのになぜ? あまのさんは不思議に思った。

 その後、父は60歳を前に転職した。だが、「言ったことを覚えていない」「アポをすっぽかす」など日々の仕事に支障が出始め、その後も何度か転職を繰り返した。

 家族内でも「言った」「言わない」でけんかになることが増えていった。派手な服装を好みおしゃれだったのに、部屋着で一日中いても平気になった。

 父に何かが起きている――。母と兄、弟も確信していたが、病院に行っても「持病のてんかんによる意識障害」と説明された。

 異変を感じてから7年が経過した。

 16年、主治医が代わったのをきっかけに精密検査を受け、父は「若年性認知症」だと告げられた。

 認知症は高齢者に多い病気だが、65歳未満で発症すると若年性認知症と呼ばれる。父はアルツハイマー病が原因となっていて、だんだんと記憶や判断力が低下していくという。

 父の世話は母が引き受けるつもりでいたが、まもなくして母に進行がんが見つかった。すでに手術ができないくらいに悪化していた。

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