中国・新疆ウイグル自治区カシュガルに、イスラム聖者廟(びょう)「マザール」の取材に訪れたのは6月末。砂漠にあるオルダム・マザールの取材を断念した後、レンタカーで再びカシュガル市街を目指していた。

 イスラム暦の1月を控え、かつてなら色とりどりの旗を手にオルダムを目指す巡礼者でにぎわっていた時期だろう。だが今、沿道で目に付くのは地図アプリで「反テロ訓練場」と表示される砂地や「習近平(シーチンピン)総書記と新疆各民族の心は一つ」と書かれた標語などだ。

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 オルダム・マザールは衛星画像から消失した。しかしカシュガル市中心部にある、オルダム・マザールと関連が深い二つのマザールは現存していた。

カシュガル中心部にあるアリー・アルスラン・ハーンの聖者廟の入り口。門は閉ざされ、看板もなく、監視カメラが設置されていた=2024年6月29日、小早川遥平撮影

 ウイグル族の女性研究者、ラヒレ・ダウト氏が2016年に記した論文によると、一つ目はオルダムと同じく、アリー・アルスラン・ハーンをまつるマザール。オルダムで仏教徒に討たれた後、首だけが市内に運ばれ、埋葬されたと伝えられる。かつてオルダム巡礼の際にウイグル族が立ち寄ったスポットの一つだった。

 だが、今は門は閉ざされ、一般人は立ち入ることができない。隣のホテルの敷地から墓のようなマザールの一部が確認できるが、正面からは「愛党愛国」と書かれたモスクのような建物しか見えない。

 住民にマザールのことを知っているのか尋ねてみた。

「愛国的でないと・・・」

 アリーがまつられていると知…

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