写真・図版
積水ハウスが地面師詐欺グループに55億円をだまし取られるきっかけとなった元旅館。別の企業に売却が決まり、解体工事が進んでいた=2020年5月28日、東京都品川区

 積水ハウス(大阪市)が2017年、都内の旅館跡地の土地所有者を装った地面師グループから購入代金など約55億円を詐取された事件。逮捕された17人の中には、ネットフリックスのドラマ「地面師たち」の中で、豊川悦司さんが演じる地面師グループのリーダー・ハリソン山中のモデルとみられる人物もいた。

 記者の手元にある1枚の集合写真の画像。事件の4年前に開催されたゴルフコンペで、記念に撮られたものだという。

 参加者らが笑顔で並ぶ中で、濃いめの眉毛にフレームの細い眼鏡をかけた男が写っていた。温厚そうな表情で、風格は企業の社長のようだ。

 この人物こそ、積水ハウス事件で地面師グループ全体の「リーダー」役だったとされる男(71)=服役中=だ。

写真・図版
積水ハウス事件をめぐる人物相関図

 「グループの中心的な立場にあった」

 東京地裁は20年3月、詐欺罪などに問われた男についてこう認定し、懲役12年の判決を言い渡した。

「面倒見良かった」「違法行為をためらわず」 大物地面師の素顔 

 判決によると、男は東京都品川区の旅館跡地を所有する女性の不動産情報を手に入れ、複数の人物と事件を計画。17年3~6月、なりすまし役の女性に積水ハウス側と交渉させ、土地と建物3棟の売却代金をだまし取った。

写真・図版
積水ハウスが2017年に被害に遭った地面師事件の舞台になった土地は、別の企業が本当の所有者側から買い取った。今は30階建ての高級タワーマンションが立っている=2024年9月12日、東京都品川区西五反田2丁目

 男はかねて、数々の事件で、計画の主導役として関与がうわさされる「大物地面師」として、捜査関係者の間でも知られてきた存在だった。

 「あの人は芸術家。フェイクのパイオニアだ」

 積水ハウスの事件で、グループの一員として偽造有印私文書行使などの容疑で逮捕され、不起訴になった会社役員の男性(65)は、男について、真顔でこう評した。

 知人の紹介で約40年前に知り合い、家族ぐるみで付き合いがあった。日ごろは、子どもの面倒見が良かった。半面、詐欺などの犯罪を「成功」させるために、その過程でも違法行為をためらわなかった、と男性は振り返る。

 男はなぜ、積水ハウス事件を計画したのか。

専門家も気付かない偽造パスポート 弁護士や公証人も登場

 判決は事件について、「専門…

共有