2003年8月29日、米ワシントン州シアトルで行われたオリオールズ戦の三回、右前にきた打球を処理し本塁に向かって送球体勢に入るマリナーズのイチロー=ロイター

 「レーザービーム」

 大リーグ関係者にイチロー氏(51)の印象を尋ねると、積み重ねた安打以上に、マリナーズ時代の守備でのワンプレーを語る人は多い。

 「The Throw(あの一投)」とも呼ばれるプレーは、2001年4月11日、米カリフォルニア州オークランドで行われたアスレチックス戦で生まれた。

 マリナーズの3点リードで迎えた八回1死一塁、アスレチックスの代打ラモン・ヘルナンデスの打球は一、二塁間を抜けた。一塁走者のテレンス・ロングは首を振り、ボールめがけて突進する右翼手の姿を確認したあと、迷わず二塁ベースを蹴った。

 一、三塁にできれば、次は1番ジョニー・デーモンに回る。一打同点のチャンスとするための積極的な走塁だった。

 次の瞬間、伝説が生まれた。

 背番号51の右翼手は、無駄のない動きから三塁へストライク送球。矢のような鋭い軌道に、試合を中継していたアナウンサーは「レーザービーム」と表現した。

 一連の映像は米スポーツ局などのニュースで何度も繰り返し流れ、全米に広まっていった。

 イチロー氏は今月21日の殿堂入り発表後、こう振り返っている。

ボールが伸び上がってくるようだった

 「あの試合は先発(出場)で…

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