
「門司港は明治22(1889)年に開港し、横浜・神戸と並ぶ日本の3大貿易港として栄えた港町です」
海風を浴びながら、門司港(北九州市門司区)の「第一船だまり」から門司港レトロクルーズの遊覧船が出港した。三木教男船長(54)が軽妙な語り口で案内する。関門海峡に出て山口・下関の沿岸を望み、港に戻る約20分の船旅だ。
門司港は1889年、石炭や米などの5品目の輸出が認められる特別輸出港に指定され開港。運航する関門汽船も、同じ年に創立した。第一船だまりは小型船が係留される場所で、翌年に完成した。当時は沖に停泊した船に石炭や荷物を運ぶ小舟「はしけ」でにぎわったという。「燃料が石炭だった時代、門司は今でいうドバイのように栄えた街だったんですよ」と、下船後に三木さんが教えてくれた。
門司の繁栄に深く関わったのが、新1万円札に描かれた「日本資本主義の父」、渋沢栄一(1840~1931)だった。
開港と同じ年、渋沢が大株主となり「門司築港会社」が創業。辺りに広がっていた塩田を埋め立て、港湾を整備した。
デジタル版「渋沢栄一伝記資…