少女のまなざしは、宙をさまよっていた。
2月下旬、ケニア南西部ナロクの小さな交番に、マサイの少女(13)が座っていた。「何があったんだい」。そう尋ねる男性警察官に、消え入りそうな声で答える。「きのう、逃げてきました」
少女は9歳で女性器切除(Female Genital Mutilation=FGM)を受けた。マサイ社会ではクリトリスを含む女性器の一部をカミソリで傷つけたり、切り取ったりする行為が成人儀礼の一部として続いている。
世界で2億3000万人の女性たちが
施術を受けると、結婚の準備ができたとみなされる。少女は、親族に無理やり中年男性と結婚させられそうになり、近くの保護施設「マサイ開発計画教育センター」に駆け込んだ。家は貧しく、親族は家畜などの婚資を得ようと少女の結婚を急いだという。
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【連載】慣習のジレンマ 女性器切除(FGM)のいま
女性器切除(FGM)という習慣がアフリカや中東の一部にむかしからあります。女性の人権を侵す行為として、国際的な廃絶の取り組みがある一方、伝統儀礼だとの反論もあります。ケニアから最新事情を報告します。
FGMは、アフリカやイスラ…