陸羽東線を走る車両=JR東日本東北本部提供

 JR東日本は、利用客が特に少ないローカル線36路線72区間の2023年度収支を公表した。宮城県関係では石巻、大船渡、気仙沼、陸羽東の4路線5区間が公表対象で、いずれも前年度より赤字幅が広がった。100円の運輸収入を得るのに1万3465円かかる区間もあった。

 地方のローカル線の経営状況が厳しくなるなか、JR東は19年度分以降、1日1キロあたりの平均利用者数(輸送密度)が2千人未満の線区の収支を公表している。36路線72区間の23年度の収支は10月29日に公表。すべて赤字で、赤字総額は約757億円だった。

 県内5区間で赤字額が最も大きいのは大船渡線の一ノ関(岩手県)―気仙沼間で14億3400万円。ほかに石巻線の小牛田(こごた)―女川間で11億5300万円、陸羽東線の古川―鳴子温泉間で11億5100万円、鳴子温泉―最上(山形県)間で4億3900万円、気仙沼線の前谷地―柳津間で2億8千万円となり、いずれも赤字額は前年度より増加。赤字額は5区間で計44億5700万円に上り、前年度より1億8200万円増えた。

 100円の収入を得るのにいくら経費がかかるかを示す「営業係数」は、陸羽東線の鳴子温泉―最上間が1万3465円に上った。JR東が公表した72区間で営業係数が最大だったのは久留里線(千葉県)の久留里―上総亀山間の1万3580円で、鳴子温泉―最上間は3番目に採算性が悪かった。

 県内の営業係数はほかに、大きい順に気仙沼線の前谷地―柳津間が4080円、陸羽東線の古川―鳴子温泉間が1395円。大船渡線の一ノ関―気仙沼間が1255円、石巻線の小牛田―女川間が978円だった。

 収支が悪化する背景には輸送密度が大きく減少していることがある。JR東が誕生した1987年度と2023年度の輸送密度を比べると、陸羽東線の鳴子温泉―最上間が89%減、古川―鳴子温泉間が74%減。気仙沼線の前谷地―柳津間は85%減、石巻線の小牛田―女川間で71%減、大船渡線の一ノ関―気仙沼間で62%減となった。

 県は昨年、岩手県が主導する大船渡線を除いた3路線について、沿線自治体や商工・観光団体が参加する会議を立ち上げ、利用客を増やすための取り組みの方向性をまとめた。現在は沿線自治体が主体的に活性化策を進め、県が補助金などで後押ししているという。

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JR東日本が公表した県内4路線5区間の2023年度収支

路線名 区間(営業キロ) 赤字額(億円) 22年度の赤字額(億円)

石巻線 小牛田―女川(44・7キロ) 11・53 11・16

大船渡線 一ノ関―気仙沼(62・0キロ) 14・34 14・27

気仙沼線 前谷地―柳津(17・5キロ) 2・8 2・18

陸羽東線 古川―鳴子温泉(35・5キロ) 11・51 11・05

     鳴子温泉―最上(20・7キロ) 4・39 4・09

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