中国の深圳日本人学校に通う10歳の男児が刃物を持った男に刺されて死亡した事件で、男児の死が発表されてから一夜が明けた20日も、学校の校門前には次々と花束が届けられた。ただ半分近くは、バイクの配達員に届けられた「置き配」。そこから浮かぶのは、当局の監視を意識しながら生きる、中国社会の現実だ。

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 校門前にバイクが止まる。ドライバーの男性が座席後部のかごから花束を取り出した。花束を台にそっと置くと、スマホを取り出し撮影した。男性は宅配ドライバー。撮影は、確かに配達したと証明するためだ。

深圳日本人学校に亡くなった男児への献花の花束を届ける宅配ドライバー=2024年9月20日、中国・広東省深圳市、小早川遥平撮影

 事件は中国の主要メディアで報じられていなかったが、19日午後にはSNSで男児が亡くなった情報が広まり、献花に訪れる人が増えた。

 直接、現場に来て手を合わせる人も多い。しかしその一方で、半分近くが置き配による献花だ。

 10歳の男児が登校中に男に襲われて亡くなった痛ましい事件だ。なぜ、こんなにも「置き配」が多いのか、配達員に声をかけてみた。

 「昨日からもう7、8回は来ている。(湖北省の)武漢や山西省のお客さんのものもある」

 20日朝に花束を届けに来たドライバーはそう話し、足早に次の配達に向かった。広大な中国の遠方でニュースに接したけれど、現場に来られない人が置き配を利用するケースがあるようだ。

「公安がこんなに…」

 ただ、取材を続けていると、違う側面も見えてきた。

 19日に花束を持って現場を…

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