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昨夏の甲子園でプレーし全国的な注目を集めた県立石橋高校(栃木県下野市)3年の入江祥太さん(18)が4月から慶応大学に進む。AO入試で環境情報学部に合格した。すでに野球部の合宿所に入り、練習を始めている。大学野球のマウンドで活躍し、その後のプロ入りを夢見ている。
入江さんは宇都宮市出身。2023年夏の甲子園で優勝した慶応高校3年の加藤右悟捕手とは中学で同じチーム「県央宇都宮ボーイズ」でプレーした。2人は大学でもチームメートになる。
入江さんは「とにかくKEIOはかっこよい。加藤ともう一度ともに野球がしたかった」と言い、慶大進学を目標として周囲に公言していた。
1月28日、横浜市港北区にある慶大野球部合宿所に入り、4人部屋の集団生活を始めた。2月1日から練習にも参加している。大学では好きな打撃も生かしつつ、投手に専念するつもりだ。
当面の目標は1年秋のベンチ入り、そのうえでの2年春の登板だ。大学日本一になり、プロ野球ドラフト会議で指名される道を思い描いている。
4番エースで臨んだ昨夏の甲子園は、8月13日の初戦(2回戦)で11奪三振をとり完封勝利。石橋として春夏通じての甲子園初勝利をあげた。同16日の3回戦は敗れたものの、2回途中から救援し7回2失点だった。
公立高校の石橋の躍進が注目された。入江さんは「弱い立場でも苦難を越え勝つことで、周囲に希望を与えられた実感がある。チームの執着心が勝ちにつながった」と話す。週1回、部員全員でミーティングを開いた。練習メニューを行う前後は、練習の意義づけを共有する話し合いを頻繁に持った。主体性が生まれ技術も向上していったと振り返る。
甲子園の敗戦後は、慶大環境情報学部のAO入試を目指し準備に入った。他大学野球部からの入学の誘いはなかった。
1次試験は書類審査で、9月1日までに書類を出す必要があった。志望理由書や自由記述の文書では、自宅から通える県立高校で文武両道を目指した上で、私立強豪校を倒し甲子園に出た体験を前面にアピールした。
スポーツで強豪私立との格差が広がっているとして、「県立高校でも戦えるアマチュアスポーツの環境をつくりたい。どうしたら弱いチームを強くできるのか大学で研究したい」と訴えた。
10月の2次試験(面接)をへて、11月1日に合格通知を受け取った。
今は大学野球部の練習が週6日ある。走り込みや体幹トレーニングで体力を強化している。ブルペンでの投球も始めた。
直球の最速は142キロだが、いずれ155キロを出したい。持ち球のチェンジアップを磨き、ツーシーム(シュート)も覚えたいという。
大事にしているのはマウンドでの「笑顔」。プロ野球選手になった後の夢は、「野球の指導者は大変そうだし目指していない。自分で会社を立ち上げることにチャレンジしたい」と屈託なく話した。