93年2月、宮沢内閣の外相・渡辺美智雄が訪米し、前月発足したクリントン政権の出方を探った。貿易自由化の拡大を目指すガット(関税貿易一般協定)の多国間交渉ウルグアイ・ラウンド(UR)では、全ての農産品の輸入制限を関税に置き換える「例外なき関税化」が焦点だった。

 日米外相会談の記録によると、「日本ではコメは極めて感情的な問題」と語る渡辺に、国務長官のクリストファーが「コメは日本が自国市場をコントロールする好例と捉えられている。米国の業者が参入できるようになることが重要だ」と釘を刺す。巨額の対日貿易赤字が続く米国にとって、コメは日本市場の閉鎖性の象徴だった。

 同席した通商代表カンターがUR全体で「60~100点のどこかに落ち着くことを期待」ともらすと、渡辺は「農水大臣とカウンターパートの協議で妥協案を見いだせないか」と切り出した。

UR全体から切り離されたコメ問題

 交渉のチャンネルを強硬な通…

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