1月の能登半島地震で、津波で漂流してきた建物が引っかかったために、鉄骨造の建物がほぼ倒壊する被害が出ていたことが日本建築学会の調査で明らかになった。
津波が通り抜けられず、押す力が働き続けた結果で、漂流物がなければ倒れなかった可能性がある。各地の津波避難タワーにも同様の構造をしたものがあり、避難した人が危険にさらされる恐れがあることから、専門家は注意を呼びかけている。
調査したのは、壁谷沢寿一・東京都立大准教授ら。石川県珠洲市の鵜飼(うかい)地区で津波被害を受けた鉄骨平屋建ての倉庫に着目した。
その北側には、木造家屋の2階部分が逆さまの状態で衝突していた。地震で崩れ落ち、50メートルほど先から流れてきたとみられ、津波が押し寄せてくる側をふさぐ形でとどまっていた。
倉庫の外壁は、津波で外れやすい鋼板製。いったん突き抜ければ、津波は鉄骨の柱の間を通り抜けていく。
ところが、家屋が漂着したことで、流れが阻まれた。この家屋を介して津波が倉庫を押し続ける状態になったとみられる。
この結果、倉庫の柱は軒並み30度ほど傾いた。柱の間に取り付けられていた金属製の筋交いもすべて破断していた。
付近の浸水深は2.95メートル。倉庫の構造をもとに計算すると、津波が通り抜けたなら4.81メートルの高さの津波まで耐えられたはずが、ふさがれたことで2.85メートルまでしか耐えられない状態になっていた。
同じような鉄骨造で、壁をなくし、屋根部分に上れるようにすると、津波避難タワーになる。簡易な立体駐車場と似た外観で、設置のしやすさから各地に建てられている。
避難タワーの場合は当然、想…