100周年記念誌をまとめた大塚幸さんと当時の電動客車=鳥取県南部町

 100年前の1924(大正13)年に開業し、43年後に姿を消した「法勝寺鉄道」。鳥取県米子市と法勝寺(鳥取県南部町)間、約12キロを結んだ私鉄の歴史や思い出を語り継ごうと、「100周年記念誌」が町教育委員会から刊行された。

 法勝寺鉄道はもともと、地元住民らが中心となって設立された。戦後は日ノ丸自動車(鳥取市)が運行したが、1960年代のモータリゼーションの流れに逆らえず、67年に廃線となった。

 当時の電動客車は、今も町の文化複合施設「キナルなんぶ」(同町法勝寺)に展示されている。廃線後に地元の小学校に展示されていた車両で、老朽化で傷んだため約10年前に修理・復元したものだ。県保護文化財に指定されている。

 100周年記念誌は、町教委人権・社会教育課の大塚幸・課長補佐が中心となってまとめた。法勝寺鉄道の詳細な歴史からはじまり、当時の駅舎や沿線風景、使用されていた行き先表示板など貴重な写真が豊富に掲載されている。

 住民たちの思い出も多数紹介されていて、当時の利用客は「家から駅に電車が近づくのが見え、運転手も警笛で到着を伝えてくれ、電車と競争して駅に向かっていました。駅を出発するとき、車掌が最後に飛び乗り、到着時は一番先に飛び降りている姿はかっこよく……」とつづる。

 住民らに聞き取りをした大塚さんは「熱い気持ちが伝わってきて、地元住民のみんなに愛されていた電車なのだと実感しました。実際に乗った人たちが高齢となる中、何としてでも記憶を残しておかねばと思ってつくりました」と話している。

 100周年記念誌は非売品。県内各地の図書館で閲覧できる。当時の車両は見学可。問い合わせはキナルなんぶ(0859・46・0870)へ。(斉藤勝寿)

共有
Exit mobile version