野添文彬さん

 米軍専用施設が沖縄に集中しすぎている問題が指摘されて久しい。そんな中、「本土の沖縄化」という新しい基地問題の浮上に注意を促している国際政治学者が沖縄にいる。沖縄国際大学の野添文彬教授だ。「最低でも県外」への基地移設が叫ばれながら頓挫したあのときから十数年。何がどう変わったのか。

「最低でも県外」から「南西シフト」まで

 日本にある米軍専用施設のうち7割までもが沖縄県に集中しています。この状況はもう変えられないとあきらめている人は、いまや沖縄の中にもいます。

 でも2009年には、状況が変わるかもしれないとの期待が沖縄県内にありました。自民党から民主党(当時)への政権交代が起き、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先を「最低でも県外」にすると言った鳩山由紀夫・同党代表が首相になったからです。

 あのとき私は大学院生として調査のため沖縄にいました。居酒屋で「選挙に行ったか? 沖縄が変わる大事な選挙だぞ」と言われたのを覚えています。周囲には高揚感があり、それは私の中にもありました。しかしその後、新政権への期待は裏切られました。民主党政権は新たな移設先を見つけることができず、辺野古(名護市)移転に回帰したからです。そのあとに再度政権を握った自民党は、移転に反対する自治体の頭越しに立地住民に補助金を配るなどして、移転を強行しています。

 あのときの失望感から生まれたのが「本土で政権が変わっても沖縄の現状は変わらないなら、沖縄は一つにまとまって本土と対峙(たいじ)していこう」というオール沖縄の運動です。

 また10年代以降には、米軍や自衛隊の配置をめぐって沖縄などへの「南西シフト」も進んでいます。中国や北朝鮮の脅威に対応するとして、部隊や防衛拠点を受け入れる負担が沖縄に上乗せされているのです。

 日米同盟が重要であるという…

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