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石井耕一さんが沖縄から持ち帰った日本軍の部隊の「戦時名簿」=2024年8月3日午前9時55分、新潟市北区嘉山、吉沢龍彦撮影
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 太平洋戦争末期の沖縄戦は住民を巻き込んで激しい地上戦となった。日本軍は壊滅し、それに関わる資料はことごとく失われた。

 ところが、ある部隊の、将兵一人ひとりの軍歴などを記した「戦時名簿」が、沖縄から遠く離れた新潟市内でひっそりと保管されている。戦場で持ち運んでいた曹長が持ち帰ったものだという。きわめて珍しいという名簿をたずねた。

将兵の経歴、克明に

 名簿を持ち帰ったのは、石井耕一さん(故人)。砲兵部隊である野戦高射砲第80大隊の第3中隊に曹長として従軍し、沖縄に送られた。

 曹長は、部隊幹部と兵士との橋渡し役となる。石井さんは人事係として、将兵の軍歴を記録する戦時名簿の管理も任された。石井さんが所属した中隊はサイパン島陥落直後の1944年7月に編成され、約140人で組織された。

 戦後ふるさとに戻った石井さんは新潟県豊栄町(現新潟市北区)で助役を務め、町が豊栄市となった後には市長を16年務め、2012年に98歳で亡くなった。元市長の石井さんが残した様々な資料は新潟市北区郷土博物館に寄贈され、「石井耕一家文書」として保管されている。その中に、沖縄から持ち帰った中隊の戦時名簿が含まれていた。

 1ページが縦33センチ、横…

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