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 第74回愛知県高校優勝野球大会(県高校野球連盟主催、朝日新聞社など後援)は29日、岡崎レッドダイヤモンドスタジアムで準決勝があった。享栄が今春の選抜大会出場の豊川を6―0で破り、中京大中京は中部大春日丘に2―1で競り勝って決勝へ進んだ。決勝は5月3日午前10時から同球場で行われる。両校は5月18日から岐阜県で開かれる春季東海地区大会への出場も決めた。

享栄のパウエル 「良い先頭打者」になるための隠れた努力

 「1番打者が打ち取られるとチームの雰囲気が乗らない」。一回裏、6球目だった。享栄の1番打者、パウエル・キアヌ選手(3年)が捉えた球は、左翼手の頭を越えて二塁打。ベンチからは「良い先頭(打者)!」と声が飛んできた。試合後、照れた笑顔で振り返った。うれしかったのにはわけがある。

 イギリスに生まれ、6歳からは岡崎市で育った。小学2年生のとき、兄と一緒に野球を始めた。私学4強とされる享栄に入学したのは大藤敏行監督に「他の4強を倒して甲子園に行こう」と誘われたから。

 だが、昨夏はけがの影響で出場できなかった。課題の一つは、打撃の際の体重移動。思うような打撃ができなかった。家に帰れば1時間ほど素振りをする日々。一人で動画を撮影し、振りの確認を繰り返した。

 やっと出た結果だった。二回にも中前適時打を放ち、チームに勢いをつけた。守っては小山隼和投手(2年)が、今春の選抜大会に出場したモイセエフ・ニキータ(3年)擁する豊川打線を無失点に抑え込んだ。

 パウエル選手は「次も先頭で塁に出たい」と決勝を見越す。大藤監督は「調子に乗っているとドツボにハマる」と手厳しい。(渡辺杏果)

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