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松本奈々子(右)とアンチー・リン
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 日本の民話に登場する山姥(やまんば)。台湾の原住民が語り継ぐ、山奥にあるとされる女性だけのコミュニティー。もし日本と台湾の山がつながり、彼女たちが出会ったら……。そんな思いつきから、日本と台湾のアーティストが一緒に物語を紡ぎ、舞台作品にした。女性たちの物語を「私たちの手に取り戻したい」という。

 作品「ねばねばの手、ぬわれた山々」を手がけたのは台湾のビジュアルアーティスト、アンチー・リンと、日本のダンスアーティスト、松本奈々子。京都国際舞台芸術祭(KYOTO EXPERIMENT)で10月に上演する。

 原住民の「タイヤル族」をルーツに持つリン(タイヤル名はチワス・タホス)は、数年前、祖先からの言い伝えを初めて知った。山の奥深くの「テマハホイ」という場所に、女性だけの集団がハチに守られながら暮らしている――。そんな内容だ。

 タイヤルの男性たちはこの言い伝えをおどろおどろしいものとして語ってきたというが、リンは「とてもアバンギャルドだと思いました」。女性であり、性的マイノリティーである自分には、「テマハホイの女性たち」は、家父長制や異性愛を基本と考える規範にあらがう存在だと感じられたという。

 一方、東京在住の松本は妖怪…

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