口の中で歯周病の原因になる菌が、インフルエンザウイルスへの感染を促す働きがあることを、日本大学の研究チームが動物の細胞を使った研究で発見した。歯周病は「世界で最も蔓延(まんえん)している感染症」とも言われ、治療や口腔(こうくう)ケアが、インフルエンザの予防につながる可能性を示す研究だという。
論文が米科学誌「ジャーナル・オブ・バイオロジカルケミストリー」に掲載された(https://doi.org/10.1016/j.jbc.2025.108166)。
歯周病は歯周病菌への感染で起こり、歯肉や歯を支える骨が溶けていく病気。日本人が歯を失う原因で最も多く、高齢者では半数を上回る人で進行しているとされる。
一方、近年は、口の中の衛生環境の悪化が、インフルエンザを含む呼吸器感染症の発症や、重症化と結びついているとの報告が相次いでいる。歯周病菌についても、インフルエンザの感染に影響する可能性が指摘されてきたが、詳しいメカニズムは不明だった。
そこで日大歯学部の神尾宜昌(のりあき)准教授(感染症学)らのチームは、歯周病の代表的な原因菌が生み出す「たんぱく質分解酵素」に着目。A型インフルエンザウイルスへの感染に及ぼす影響を、イヌの腎臓由来の培養細胞を使って調べた。
その結果、この酵素によって、ウイルス表面のたんぱく質が切断され、細胞に感染しやすい形状に変化することが確認された。
酵素の働きを阻害する成分を加えると、ウイルス表面のたんぱく質は分解されず、感染も抑えられたという。酵素を作れなくした歯周病菌を使った実験でも、同様に感染が抑えられていた。
こうした結果からチームは…