ホ●(小書きのホ)チリをつけた樺太アイヌの子ども(左)=人類学者の石田収蔵氏撮影、アイヌ民族文化財団提供

 サハリンで収集され、樺太アイヌの子どもらが髪につけていた装飾品とされる「ホ●(小書きのホ)チリ」が、資料を所有しているドイツ・ケルン市の博物館から北海道白老町にある国立アイヌ民族博物館に寄託された。世界で数点しか確認されておらず、道内では北海道博物館所蔵の1点に次いで2例目となる貴重な民俗資料だ。寄託は8月。

 寄託したのは、博物館の開館前から協力関係にあったケルン市立のラウテンシュトラウフ・ヨースト博物館。同館によると、木綿の布に黒や青、黄色のビーズが縫い付けられ、木綿糸でつるせるようになっている。大きさは縦5.2センチ、横4センチ、厚さ0.6センチほど。ドイツ人骨董(こっとう)商が入手し、1907年に同館に持ち込んだという。サハリンで収集したこと以外は分かっていない。

 樺太のアイヌ民族とビーズについての研究に詳しいアイヌ民族博物館の田村将人・資料情報室長によると、樺太アイヌの子どもが前髪から垂らしてつけたとみられる。小動物の狩りができるなど成長したと周囲の大人から認められると取り外され、捨てられたり、再利用されたりしたため、現存する例は極めて少ないという。ビーズは中国製とみられ、交易でもたらされたらしい。

 男児だけが使ったとも、女児や女性も髪飾りにしたとの記録もあり、未解明な部分が多い。同館で調査・研究を進め、将来の展示に向けた検討も進める。

 今回寄託されたホ●(小書きのホ)チリは99年、白老町にあった旧アイヌ民族博物館の工芸品展で展示されたことがある。(松本英仁)

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