高倉健さんの映画は、「日本俠客(きょうかく)伝」(1964年)のころから新宿のオールナイトなんかで見て熱中していました。アメリカから戻った翌年の68年、東映の人に頼み、ホテルの喫茶店で会えることになったんです。

美術家・横尾忠則さんが半生を振り返る連載「自在に描き 時代を駆ける」。全5回の3回目です(2024年4月に「語る 人生の贈りもの」として掲載した記事を再構成して配信しました)。

 僕は手ぶらなのに、健さんはサイン入りの写真パネルを用意してくれていた。それから何度も会うようになりましたね。

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 《同年には、高倉さんといっしょに、テレビの深夜番組「11PM」に出演した》

 台本には、テーブルの下のドスで健さんに斬られるマネをするって書いてあったけど、そんな馬鹿なことはできない。そうなると2人で話さなければならない。健さんは大スターで慣れているから、僕にいろいろ質問してくれると思った。なのに、「横尾さんはヒゲが似合いますね」って言うだけなんです。

 僕は照れて、そのままテーブ…

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