写真・図版
燃料デブリの試験的取り出しで、装置を押し込むためのパイプ=東京電力提供

 東京電力福島第一原発の廃炉に向けた「本丸」とされる燃料デブリ(溶け落ちた核燃料)の試験的取り出しが、初日からつまずいた。作業手順を間違えるという単純なミスが原因だった。福島県は22日、「管理体制に問題があるのではないか」と、東電の組織そのものを厳しく批判した。

  • 「廃炉の本丸」初日から手順誤り作業中断 容器内へ装置を挿入できず
  • 【そもそも解説】ミスで作業中止、燃料デブリの取り出しは難しい?

 デブリの試験的取り出し作業が延期になったことを受け、県危機管理部の伊藤繁・政策監が県庁で、東電福島第一廃炉推進カンパニーの高松樹・シニアバイスプレジデントに「同様のミスを二度と起こさないように」と求める申入書を手渡した。申入書では「重要な作業でありながら、今回の中断は初歩的なミスで、県民に大きな不安を与えかねない」と指摘した。

写真・図版
「二度と起こさないように」と東京電力に申入書を手渡す福島県危機管理部の伊藤繁・政策監(右)=2024年8月22日午後4時42分、福島県庁、岡本進撮影

 手渡す前に、伊藤政策監は「昨年10月以降、いろいろなトラブルが発生している。作業管理の体制に問題があると思っている」と言及。そのうえで「デブリ取り出しは県民が大きな期待を寄せている。注目される作業なので、それなりに相当な時間をかけて準備したと思う。確認作業に抜けがあるのではないか」「そこが弱いと気づいて対策を講じていると思うが、一つ間違いが起きると大きな影響が起きかねない」と、依然として組織的な問題があるのではないかと指摘した。

 これに対し、高松氏は「反論の余地もない。二度とこのようなことが起きないようにしたい。県民に心配をかけて申し訳ない」と謝った。

東電、前日には「準備が整った」と説明も……

写真・図版
燃料デブリの取り出し作業開始の延期を説明する東京電力の担当者=2024年8月22日午前、福島県庁、滝口信之撮影

 高松氏はその後、報道各社の取材に応じ、「最初の段階でつまずいたことは、情けない」と話した。

 東電は21日の会見で「使用する機器の点検を行い、作業手順の確認を実施してきたが、本日準備が整った」と説明。22日の作業では、燃料デブリを回収する装置が格納容器への通り道にある「隔離弁」に2時間ほどで到達するとの見通しを示していたが、その前に作業を中断した。(岡本進、滝口信之)

原発立地自治体の住民「信頼崩れかねない」

 デブリを取り出さないと復興…

共有