東京高裁が昨年末、東証プライム上場企業である「日機装」(本社・東京)子会社の破産を取り消したことがわかった。借金を返す能力がない、としていた東京地裁の決定を覆した。取り消しを求めたのは子会社の創業者という。何が起こったのか。

東京地裁と東京高裁が入る庁舎=東京都千代田区

 日機装は産業用ポンプや医療機器などを手がけるメーカー。2024年12月24日付で破産が取り消されたのは、日機装の連結子会社「創光科学」だ。もともと06年に設立された名城大学(名古屋市)発ベンチャーで、除菌などの効果がある「深紫外線LED」の製造にかかわる技術を開発し、その特許を持っていた。日機装は、ファンドを通じた出資で創光科学の設立に関わり、12年に株式を直接取得して子会社化した。

 東京商工リサーチによると、日機装は、深紫外線LED事業を見直すなかで創光科学の清算を決め、23年5月に東京地裁から破産開始決定を受けた。負債総額は約14億円。この決定の取り消しを求め、創光科学の創業株主である一本松正道氏ら3人が抗告していた。

 一本松氏らは抗告のなかで、創光科学の破産の目的は「日機装がLED技術の特許を確保し、創業者などの利害関係者を排除するためだった」と主張した。高裁は今回、その主張までは判断していない。一本松氏は「特許を不当に安く親会社に売り、会社に損害を与えた」として今後、日機装側に損害賠償などを求めるつもりだという。

 日機装は、高裁の決定や一本松氏らの主張をどう受け止めているのか。日機装は朝日新聞の取材に対し「今後の対応は検討中」とだけコメントした。

 日機装と一本松氏らの間に何があったのか。東京高裁の決定書によると、一連の経緯と破産を取り消した理由はこうだ。

 12年に創光科学が日機装の…

共有
Exit mobile version