東京大学は10日、来年度の入学者から学部の授業料を値上げする方針を明らかにした。今より約11万円引き上げ、国が定める上限の64万2960円とする。影響力の大きい東大が値上げに踏み切ることで、他の国立大が追随する可能性がある。
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藤井輝夫総長らが10日午後6時半から記者説明会で明らかにした。値上げとセットで、家計が苦しい学生向けに、授業料全額免除の対象を、現行の世帯年収「400万円以下」から「600万円以下」に広げる方針も示した。大学院については、来年度の学部入学者が進学する2029年度入学者から、経済支援とセットで修士課程と専門職学位課程も同額の64万2960円に値上げする。博士課程は当面、現状維持とする。
国立大の授業料は、文部科学省令に基づき、国が定める「標準額」の最大1・2倍まで各大学の判断で増額できる。学部の授業料を標準額から上げるのは、東京工業大や千葉大などに次いで7大学目となる。
東大は、標準額が今の53万5800円になった05年度以降、学部の授業料を据え置いてきた。だが、教職員の人件費や教育関連経費に使われる国からの運営費交付金が、この20年間で約80億円減額。最近の光熱費や物価高で支出が年数十億円増え、財務状況が悪化した。今後、教育の国際化やデジタル化を進めるためとして、授業料の値上げに踏み切る。値上げされた4学年がそろう28年度末で、値上げによる東大の増収は年13億5千万円となる見込みだ。
藤井総長は「グローバルな競争が激しさを増す中、学生のために教育学修環境の改善は待ったなしだ。学生から届いた意見もふまえて決めた」と述べた。
5月に東大が授業料値上げを検討していることが明らかになると、学生や教員から反対の声も上がった。署名集めやキャンパス内での集会など、一部の学生による反対運動も展開された。(増谷文生)