福島県郡山市で17日に開かれる第77回全日本合唱コンクール全国大会(全日本合唱連盟、朝日新聞社主催)の小学生部門に、山形県村山市立楯岡小学校合唱部が出場する。2年ぶりの全国の舞台に、児童たちは張り切っている。
「それだとホールの2階席までしか声が届かないよ。4階席までしっかり響かせよう」
本番まで1週間を切った11日。音楽室より広い体育館に場所を移して行われた放課後の練習は熱がこもっていた。
ステージに立つのは3年生~6年生の47人。3年生が3分の1を占める元気のいいチームだ。
全国大会で金賞を受賞した経験もある同校だが、この1年で運営体制が大きく変わった。部活動の地域移行の一環で保護者会主体の運営に衣替えし、現在は外部指導者3人と教職員2人の計5人で指導にあたる。地域と学校が連携し、伝統をつないでいる。
運営の責任者であるマネジャーと合唱の指揮を担うのは、同校合唱部を長く指導した元教諭の元木朗子さんだ。
元木さんは「歌を通じた人づくり」を信条に、子どもたちと向き合ってきた。
「歌だけうまくなればいいわけでも、コンクールで賞を取るためでもない。人を育てられればと思い、聞き手の心に響く歌を子どもたちと目指してきました」
ピアノ伴奏として二人三脚を組む同校助教諭の峯田博子さんも「みんなで心が一つになって渾身(こんしん)の演奏をできれば、と思って練習してきました。その幸せを皆で分かち合いたいです」と話す。
自由曲の「少年少女のための合唱組曲『1000年の船』」は、世界の平和を求めて「ぼくら」が旅に出るという歌だ。
人の生き方そのものを問いかけているようにも取れる歌詞の意味を、全員で考えながら曲作りを進めてきた。
練習の合間には、ソプラノ、アルトなどのパートに分かれて車座になり、曲の世界観についてひざ詰めで話し合う場面も。等身大の言葉で自分なりの解釈を表現しそれぞれが意見を出し合いながら、歌詞を読み解いていく。
そしてもう一度歌い直すと、魔法がかかったようにハーモニーががらりと変わる瞬間が訪れる。子どもたちには笑顔が咲く。
部長の伊藤花音(かのん)さん(6年)は、最終盤の「世界は一つ」という歌詞がお気に入りだ。ロシアのウクライナ侵攻、中東の紛争などのニュースがいや応なく目に入る。「同じ地球上で争いが起きているのは悲しいです」
本番は47人で力を合わせて歌い上げる。
「熱心な先生たちの勢いに押され気味だったけど、最近は自分たちだけで頑張ることができるようになった。今までやってきたことを存分に生かして、一人ひとりの思いが伝わるように頑張りたいと思います」(兼田徳幸)