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敬老パスの「敬老健康パス」への衣替え案の意見交換会では、現行制度の維持を求める声が圧倒的多数を占めた=2024年1月12日、札幌市北区、日浦統撮影

 札幌市は、70歳以上の市民が公共交通で利用できる敬老パス(敬老優待乗車証)を「敬老健康パス」に衣替えする案を撤回し、当面の間、存続させる方針を決めた。12日の市議会厚生委員会で提示する。

 ただ、市の財政負担を減らすため、対象年齢を75歳以上に、自己負担割合を一律50%に引き上げる。利用可能額(チャージ上限)も7万円から4万円に引き下げる。さらに5年後をめどに、必要に応じて措置を講じる方針だ。

 昨年11月、市は「より良い制度へ」と銘打つ衣替え案を打ち出した。

 背景には、高齢化に伴い敬老パスの事業費が2025年度は65億円に達することや、5万円以上をチャージする高額利用層は利用者の1割に過ぎないが、この層に総助成額の5割が費やされていることがあった。

 自己負担をなくし、利用可能額を2万円に引き下げる一方、ICカードから健康寿命を延ばす狙いのポイント制(1ポイント=1円)を採り入れたスマホのアプリに移行するという大胆な内容だった。

 だが、各区で開いた意見交換会では現行パスの維持を求める声が圧倒的多数を占めた。健康寿命の延伸策と公共交通の優遇策を組みあわせることや不慣れなアプリへの移行が、高齢者には不評で、方針転換を余儀なくされた。

■優待額の引き下げには批判の…

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