全米学生映画祭での上映のためニューヨークを訪れた小田実里さん=一般社団法人MAKEINU.提供

 初稿は、ルーズリーフ約50枚に手書きした約2万4千字。パソコンで仕上げると、9万字を超える文章になった。

 高校2年生だった4年前、小田実里さん(21)が初めて書いた小説。

 「今日も明日も負け犬。」

 こんなタイトルをつけた、ほぼノンフィクションの物語。自律神経の不調で朝起き上がることが難しい起立性調節障害と闘う友人、西山夏実さん(21)の中学時代の日々をもとに書き下ろした。

 西山さんは、福岡県立筑紫丘高校のクラスメートだった。小説では実名で登場し、中に書いた具体的な症状や周囲とのやりとりも実際にあった出来事だ。

 西山さんはもともと友人が多く、学校が好きだった。だが、中1の冬ごろから咳(せき)や吐き気の症状が出て、教室で倒れ救急車で運ばれた。起立性調節障害の疑い、と診断された。

病気と付き合い、猛勉強で受験へ

 午前7時だった起床時刻は、中2の5月ごろには夕方になった。ベッドで横になったままの日もあった。学校は、保健室登校だった。頑張りたいのに頑張れない。そんな状態なのに、教師に「頑張りなさい」と言われた。

 その年の夏ごろ。専門医に診てもらい指導を受けると、少しずつ起きられる日が増えていった。3年生に進級すると、保健室登校をやめられるようになった。受験直前には1日15時間の猛勉強で、県下有数の進学校に合格した。

 そして2019年春、高校1…

共有
Exit mobile version