8月25日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は高野公彦さん、永田和宏さん、馬場あき子さん、佐佐木幸綱さんです。☆は共選作です。
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高野公彦選
円安もロスの寿司値は高止まりねたは近海アメリカ産ゆえ(アメリカ)大竹 博
「海の日」の本場所二日目勝ちました「美ノ海(ちゅらのうみ)」また「湘南乃海」(福山市)金尾 洵子
高性能極小アンプを内蔵しみいんみんみん日盛りを鳴く(新潟市)太田千鶴子
打ち水も夕立雲も知らぬ子はスマホでピピッとクーラーつける(東京都)渡辺 美香
にはか雨ついてないやと駆け込みし本屋のなかで友と再会(京都市)五十嵐幸助
あなたには古希も米寿もなけれども老けぬ面(おもて)がわたしを見てる(豊中市)夏秋 淳子
百歳で逝きし母親にこの吾は七十五歳まで子供であつた(香取市)嶋田 武夫
思うより地上は過ごし辛かろう今年の夏しか知らず逝く蟬(東京都)水原 理郁
半世紀前のわが絵日記 ないものは猛暑日そして線状降水帯(厚木市)杉山久美子
うら若く自死したりけるわが父はわが百歳の白頭(はくとう)知らざる(我孫子市)松村 幸一
【評】一首目、円安でも寿司(すし)ネタはアメリカ産だから値下げはない、と苦笑する、ユーモア漂う作。第二首、7月15日の「海の日」に二人の力士はみごと勝利。三首目、小さな蟬(せみ)の大音量を「高性能極小アンプを内蔵し」と表現したのが見事。
永田和宏選
流れ弾に死ぬ人あれどトラン…