月面の「宇宙農場」の想像図。地下に施設をつくり、水と肥料で栽培することが想定されている=宇宙航空研究開発機構(JAXA)提供

 2023年1月、千葉大松戸キャンパス(千葉県松戸市)に全国でも珍しい研究施設ができた。「宇宙園芸研究センター」。月面などで食料を生産する「宇宙農場」のノウハウを研究している。

 研究室の奥にある小部屋に案内してもらった。頑丈な扉を開けて中に入ると、温度と湿度が外とは微妙に異なる。中央の通路の両側にある金属製の棚には、緑や紫の作物が並ぶ。LEDの白い光が近未来的な雰囲気だ。

 棚の一つで葉を茂らせる作物を見ると、茎の先に小さなイチゴの実がなっていた。すべての作物が、土を使わない水耕栽培だ。

 千葉大には国立大学で唯一の園芸学部がある。農作物の品種改良や栽培効率の向上など全国有数の研究実績を宇宙農場にいかす。

さまざまな作物が水耕栽培されている研究室の一室。後藤英司教授によると、「宇宙農場」では限られたスペースでいかに効率よく栽培できるかがカギだという=千葉県松戸市の千葉大・宇宙園芸研究センター

 「宇宙では狭い閉鎖空間で効率よく作物を栽培しないといけない。月面の農場を実現するため、あと5割ほど効率を上げたい」。教授の後藤英司さん(64)=植物環境工学=が説明する。40年代に月面での宇宙農場の実現をめざしている。

月面は過酷な環境

 なぜ、わざわざ宇宙に農場をつくるのか。

 宇宙での人間の活動は、上空…

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