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日本M&Aセンターの本社受付のロゴ

 M&A(企業合併・買収)仲介の最大手である日本M&Aセンターが昨秋、「資金目当て」と疑われる買収案件を仲介していたことが社内で発覚し、ルールを大幅に見直していたことがわかった。今年1月から買い手に対する財務チェックを強化し、特殊な買収手法は原則禁止とした。悪質な買い手によるトラブルは今春から相次ぎ表面化しており、同社の取り組みが業界内で広がる可能性もある。

 日本M&Aセンターホールディングスの三宅卓社長が朝日新聞のインタビューに応じて明らかにした。

 同社で「資金目当てのM&A」を認識するようになったのは昨年11月ごろ、中小零細の製造業を数多く買収していた東京都内の会社との取引がきっかけだ。

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 この会社では、買収先から引き出した多額の資金が、M&Aや運転資金にあてられているとして昨秋の取締役会で問題化した。買収先から引き出した資金を、同じ会社の買収資金や仲介手数料にあてる事例も複数あった。日本M&Aセンターでは十数社分のM&Aを仲介していたが、商談中の案件はすべて中断し、社内ルールの大幅な改定に取り組んだという。

 三宅氏は都内の会社による買収事例について「不適切だった」と認めたうえで、「当初の志は間違っていなかったが、途中から積極的なM&Aに走り、資金不足となって『資金目当てのM&A』になってしまった」との認識を示した。そうした買い手を仲介したことについて、「ターニングポイントを見抜けなかったのは大きな反省点だ」とした。

 売られる会社の現預金で、その会社の株式代金や仲介手数料をまかなう手法については、ファンドや大手企業グループによる買収でも使われる手法だと強調しつつ、「(こうした)特殊な金融スキームは、裏付けとなる潤沢な資金、金融のノウハウとM&Aの志がそろうときに許されるべきだ」と語った。今後はファンドや大手に限定し、どうしても必要な場合は弁護士も含む幹部メンバーで審査する態勢を築いたという。

 三宅氏は、悪質な買い手によるトラブルが続発している事態を受けて、大手各社が取り組む対策を持ち寄り、中小の仲介業者でも使えるひな型にして広める考えも示した。(藤田知也)

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