23年前、JR新大久保駅(東京都新宿区)で、ホームから転落した見知らぬ日本人を救おうとして、命を落とした留学生の韓国人男性。その遺志を継いで活動する両親の姿と人々の交流などについて追ったドキュメンタリー映画「かけはし」の上映会が、18日午後、世田谷区である。韓国から来日する母親ら関係者のトークも予定している。

  • 韓国人留学生がのこした夢、今も 新大久保駅事故20年
写真・図版
事故で亡くなった李秀賢さんの両親。映画「かけはし」の一場面から=映画製作会社「ミューズの里」提供

 事故は2001年1月26日、山手線ホームに起きた。誤って転落した男性を助けようと、居合わせた留学生の李秀賢(イスヒョン)さん(当時26)とカメラマンの関根史郎さん(同47)が線路に下り、3人とも列車にはねられて亡くなった。李さんの両親のもとに日本中から見舞金が寄せられ、日本で学ぶアジアの留学生に奨学金を支給する団体が創設された。賛同する日韓の個人と企業からの寄付は今も続いているという。

 「かけはし」は2017年に2部構成で完成した。第1部は、奨学金の授与式などに出席する両親の姿と言葉、奨学金を受けて学んだ若者のことなどを伝える。第2部は、両国の若者が対話や体験を通じて理解を深めていく様子などを取りあげている。

写真・図版
1月26日の命日に、新大久保駅で手を合わせ、頭を下げる李秀賢さんの両親=2017年撮影、映画製作会社「ミューズの里」提供

 映画を制作した中村里美さん(60)は「国を超えた人と人のつながりが、平和を築く礎(いしずえ)になると願いながら作りました。国籍や民族、文化、言葉や価値観など様々な違いを超え、誰もが心のかけはしになれることを伝えたい」と話す。いま第3部の完成を目指しているという。

 上映会を主催する「平和を望む会」(町田市)の木村巴さん(77)は「人への信頼と愛情が平和につながることを教えてくれる作品。今こそ見てほしい」と語る。

 18日は世田谷区池尻2丁目の「せたがや がやがや館」で、午後2時開場、2時半から上映開始、定員95人。作品は約95分で、上映後には中村さん、李さんの母の辛潤賛(シンユンチャン)さん、李さんが学んでいた日本語学校の理事長で事故後に奨学会の創設と継続に尽くしてきた新井時賛(ときよし)さんらがトークをする。

 予約などは木村さんにメール([email protected])か電話(090・7238・6035)で。(上野創)

共有