レッツ・スタディー!小論文編 青原優花さん③
自分の考えを論理的な文章にする小論文。近年の大学入試では思考力や表現力がより重視され、小論文を学ぶ意義が改めて注目されています。NMB48メンバーによる小論文を河合塾の講師に添削してもらい、文章表現の要点を探ります。青原優花さん(16)担当の3回目です。(構成・阪本輝昭)
記事の後半で、青原優花さんのサイン色紙が抽選で当たる読者プレゼント企画の案内を掲載しています。ふるってご応募ください。
【お題】「練習って…」の後に続く文章を
青原さんが後輩にかける言葉「練習って」の後に続く文章を書いてください。「量より質」「質より量」のいずれでも構いません。(200字以内)
【小論文】試行錯誤して自分に負けず…
試行錯誤して自分に負けず頑張り続けると頑張った分だけパフォーマンスが良くなるよ。
時に努力が結果に繫(つな)がらなくて、心が折れそうになる時があるかもしれないけど、人は失敗した分だけ強くなれるし、昨日の自分を越えられるから、どんなに高い壁も体当たりして、がむしゃらに色んな事に挑戦してみよう。
自分だけの色を見つけようね。
いつも応援してくださるファンの方々に笑顔や元気を届けられるようにこれからも一緒に頑張ろう。
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【講評】「量」に回帰した3回目 経験盛り込めると説得力UP
河合塾の小論文担当・加賀健司講師が「小論文のかんどころ」をアドバイスします。
「練習は『量より質』だ」という結論を先に与えて書いてもらった初回、それとは逆に「質より量」で書いてもらった2回目。いったい、練習は量なのか質なのか。最終回の今回は、その結論を青原さんの自由な考えに委ねました。「量」に振り切ったのですね。
明快でブレのない「質より量」の考え方が端的に示されており、文章としても素直な表現となっています。
青原さんはもともと、「質より量」派だったと聞いています。しかし、前2回の小論文を推敲(すいこう)する過程で「質」の重要性にも思い至り、揺れ動いている様子がうかがえました。別の考えをもつ「もう一人の自分」に思いがけず出会えると、楽しいですよね。
でも、最後の最後、やっぱり「量」に回帰したのはなぜなのか。その思考のプロセスを、もう一歩踏み込んで知りたかったな、という気がします。
質・量どっちも大事だが、あえて優先順位をつけるならどっちか。青原さんは改めて考え、二つの意見を行き来し、自らの経験も思い出しつつ、「量」を選んだのだと想像します。その具体的な経験や、選択の決め手が書き込まれていれば、結論への納得感や説得力がさらに上がったと思います。
「自分だけの色を見つけようね」という一節に目が止まりました。「自分だけの色」。これは青原さん自身がアイドルになった当初に悩んだテーマでもあったのではないでしょうか。大勢いるアイドルの中で、自分の個性をどう出していけばいいのか、いやそもそも、私だけの強みってなんなのかと。
心細く、くじけそうになったこともあったでしょう。だからこの小論文は、その頃の自分あてに青原さんが書いた手紙のように感じられます。あのとき、誰かに言ってほしかった言葉を代わりに言ってあげたのだと。
そう考えると、胸を打つ文章ではあるのです。惜しむらくは、思いがあふれすぎてしまったように感じられることです。少し引いた目で、第三者の読み手をより意識して書けば、素晴らしい小論文になるだろうなと思います。
青原さんが別のテーマで書いてくれる小論文もぜひ読んでみたいです。またのご登場、お待ちしています!
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【感想】昔の自分を思い出し… 感情があふれすぎてしまった
あおばら・ゆか 2007年、大阪府生まれ。愛称ゆかたん。昨年1月から活動を始めたNMB48の「9期生」。姉の和花さんとともに加入した。特技は絵を描くこと、犬のものまね(喜怒哀楽を表現)。夢は「太陽みたいにキラキラしたアイドル」。
大勢のアイドルがいるなかで、私だけの強みってなんなのだろう。アイドルになったばかりの頃は心細く、そんなことばかり考えていました。
同期の9期生として加入した仲間たちは、みんなそれぞれ特技があり、自分だけの持ち味があり、豊かな個性で勝負していました。私も何か自分のカラーを見つけなければ、と最初の頃は焦りました。しばらくは暗中模索の繰り返しでしたね。
犬の様々な感情を鳴き声と表情で再現する私の持ち芸「犬のものまね、喜怒哀楽~!」は、そんな試行錯誤の中から、偶然生まれたんです(笑)。私、昔から観察力には自信があってですね。
友達のおうちで飼われている「むぎ」ちゃんという犬が大好きで、日がな飽きることなく観察しているうちに、犬って本当に感情豊かだなと気付いたんです。犬の感情表現をものまねするアイドルはあまりいないだろうから、これを持ち芸にしようと。
実は、この観察力でファンの方々のことも見守っています。今日はちょっと元気なさそうだなとか、今日は少しうれしそうだなとか……。ファンお一人おひとりの喜びにも悲しみにも心を寄せるアイドルでありたいと思うので、そこも感じ取ってもらえたらなと。
「犬のものまね、喜怒哀楽~!」の誕生秘話でした(笑)。
さて。今なら笑いを交えて、試行錯誤の日々をこうして振り返ることもできますが、当時は本当に必死で、泣きそうになっていました。気付けば、あの頃、私が誰かに言ってほしかった肯定の言葉を原稿用紙に書き連ねていたみたいです。
練習の「目的」とは? 私が本当に書きたかったこと
私の本当の気持ちではありますが、でも、加賀先生のいわれるように、これでは単なる今の私から昔の私への手紙かも知れません。
私のことを知らない第三者の方に読んでいただき、結論に納得してもらうための文章だということへの意識が薄くなっていました。私の思いだけが先走り、独りよがりな文章になってしまったようです。反省です……。
もう一つ、この小論文で表現したいことがありました。
それは、練習というのは何のためにするのか?という「目的」に関する部分です。
子役出身である私は、歌を歌うとき、歌詞を徹底的に解釈して、「役を演じる」つもりで表現してきました。
でも、ひそかな悩みもあったんです。昨日しっくりきた表現が、今日は何となく違う感じがすることがよくある。
心の中に迷いがあると表現はうまくいかない。焦ります。でも、最近思ったんです。それは私自身が色々な経験を積み、歳月を重ねて、歌詞のとらえ方や風景の見え方が微妙に変わってきているからかも、と。その変化を受け止め、日々、表現をアップデートしてゆければ、常に新しい私をお客さんに見せられると。
その意味を、一例を挙げてもう少し説明します。
劇場公演でやっている「狼(おおかみ)とプライド」という曲があります。基本的にかわいい恋愛ソングなのですが、最初の頃と今とでは、私自身の曲解釈が少し変わりました。
今まで、歌詞の主人公(女の子)は好きな人がいるのに、なかなか距離を縮められずに不安にかられたり焼きもちを焼いたりしているんだと思っていました。
そのイメージ通りに、心細くやきもきする心情を表現するのが正解だと思ってきましたが、最近、むしろ主人公は相手との縮まらない距離を楽しみ、高度な駆け引きを楽しんでいるという解釈もできるなと思うようになりました。そして、実際の表現を後者に寄せてみたら、以前よりもしっくりくる気がしたんです。
「質より量」の信条は不変 でも、一番大切なのは…
曲目は同じでも、人間が演じるものである以上、毎日、一つとして同じ舞台はありません。一人のアイドルの中でも、曲への解釈だったり、正しいと思う表現の仕方だったり、心の中で日々少しずつ変わっていきます。
その微細な変化を正しくパフォーマンスに反映させてゆければ、昨日よりも一歩進んだ自分になり、同時に、見ている人を永遠に飽きさせない舞台をつくっていくことができる。
それが「昨日の自分を超えられる」と書いたことの意味です。
質よりは量が大切だと私は今も信じています。でも、全ての練習は「昨日の自分を超える」ため。その目的をもって量を積むからこそ意味が出てくるんだ、ということも言いたかったのです。
でも、その部分を書くにあたっても、やっぱり私自身の思いがあふれすぎてしまい、一番言いたい部分を正確に伝わるように書けませんでした。論理が弱く、説明も足りなかったです。1回目と2回目で積み上げてきた教訓も、十分生かせたとはいえません。
悔いが残ります。再挑戦の機会をもらえたらうれしいです!(構成・阪本輝昭)
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【読者プレゼント企画】とけるかな?
姉の和花さんもNMB48で…